スマートフォンの買い替えサイクルが短くなりつつあります。その背景には、新たな技術革新としてのAI(人工知能)機能の搭載が大きく関わっているようです。

最新の業界レポートによると、消費者は次世代のAI機能を搭載したスマートフォンへの関心を高めており、これが2025年に向けたデバイスアップグレードの重要な判断材料になりつつあるとのことです。

モバイルデバイスの下取りとアップグレードに関する最新調査

グローバルプロテクション企業であるAssurant, Inc.が発表した「Assurant 2024 Mobile Trade-in and Upgrade Industry Trends Report(Assurant 2024年モバイル下取り・アップグレード業界トレンドレポート)」によれば、中古デバイス市場に興味深い変化が現れています。このレポートは、Assurantの分析プラットフォーム「Device IQ」からのデータと業界の広範な洞察に基づいています。


2024年に自分のデバイスを下取りに出した消費者は、下取りプログラムからより大きな価値を得ていることが明らかになりました。米国の消費者だけで45億ドル(約6,750億円)の価値を受け取っており、これは2023年と比較して5%の増加となっています。このデータは、下取りプログラムが消費者にとってますます魅力的になっていることを示しています。

さらに注目すべきは、2024年後半に最も多く下取りに出されたデバイスが変化したことです。これはAI機能搭載デバイスへの関心の高まりを示す重要な指標かもしれません。

デバイスの使用期間に見られる変化

2024年の第1四半期のデータによれば、消費者は以前よりも長くデバイスを使い続ける傾向にありました。下取りに出されたデバイスの平均使用期間は3.6年を超えていたのです。しかし、SamsungのGalaxy 24シリーズ(AI機能を搭載)の発売後、Androidデバイスの平均使用期間に変化が生じました。第1四半期には3.67年だった平均使用期間が、第3四半期には3.38年に短縮されたのです。

同様に、Appleの iPhoneの平均使用期間も変化しています。第2四半期には3.78年に達していましたが、AI機能を搭載したiPhone 16の発売後、第4四半期には3.63年に減少しました。

AI機能を搭載したデバイスの発売と同時期に平均使用期間が短くなっていることは、「アーリーアダプター(新技術の早期採用者)」が比較的新しい5Gデバイスを手放して、最新のAI搭載スマートフォンに乗り換えている可能性を示唆しています。

こうした変化は、モバイルデバイス市場における消費者行動の重要な転換点を示しているかもしれません。従来、多くの消費者はデバイスの物理的な故障や性能低下を理由に新しいデバイスへの買い替えを決断していましたが、今後はAI機能の有無がその判断材料として重要度を増す可能性があります。

2024年の主要アップグレードトレンド

レポートによれば、2024年のモバイルデバイス市場では以下のような特徴的なトレンドが観察されています。

下取りデバイスの変化

2024年全体を通して見ると、iPhone 11が下取りやアップグレードプログラムで最も頻繁に回収されたデバイスでしたが、年の後半にはiPhone 13がこれを上回りました。

これは消費者が比較的新しいモデルを下取りに出し、最新モデルへの買い替えを進めていることを示しています。

より新しいモデルが下取りの上位を占めるようになったことは、消費者がテクノロジーの進化、特にAI機能の搭載に敏感に反応している証拠かもしれません。従来であれば、もう少し長く使われていたかもしれないデバイスが、AI機能搭載の新モデルへの買い替えのために手放されているのです。

Androidデバイスの動向

Samsung Galaxy S21は2年連続でもっとも多く下取りされたAndroidデバイスとなりました。しかし、Galaxy S22 Ultra 5Gが2024年の2番目に多く下取りされたAndroidデバイスとなり、後半には最も多く下取りされたAndroidモデルに浮上しています。

これらの変化は、Android市場においても消費者がより新しい世代のデバイスへの関心を高めている証拠です。特にAI機能を搭載した最新モデルが市場に投入される中、消費者は以前よりも早く次世代デバイスへの移行を検討しているようです。

消費者のAIへの期待と今後の展望

Assurantが実施した「Connected Consumer Trend Report(接続された消費者トレンドレポート)」によれば、米国の消費者のほぼ半数が、次に購入するスマートフォンがAI機能、サービス、ツールをサポートすることを期待しているとのことです。さらに、約20%の消費者がAIを購入決定において「非常に重要」と考えています。

現在、米国の消費者の約11%が最近スマートフォンをアップグレードしており、約16%が今後6ヶ月以内にアップグレードを計画しています。このペースでいけば、年半ばまでに米国の消費者の3分の1がAI対応デバイスを所有することになります。

Assurantの「Connected Decade(接続された10年)」の研究データと、下取り・アップグレードプログラムを通じて返却されたAppleおよびAndroidデバイスの平均使用期間が年後半に顕著に短くなったという事実を組み合わせると、新世代のAI対応デバイスへの需要がアップグレードサイクルを加速させる可能性があることを示唆しています。

環境への好影響

デバイスの下取りやアップグレードは消費者に経済的なメリットをもたらすだけでなく、環境にもポジティブな影響を与えています。新しいデバイスを製造する代わりに既存のデバイスを再利用することで、2024年には約180万トンの炭素排出が回避されたと推定されています。

この推定値はAssurantのCarbon IQ(個々の接続デバイスの炭素影響に関する洞察を提供するAssurantのソリューション)に基づいています。

さらに、下取りプログラムにより、約600万トンのデバイスが埋立地に廃棄されることを防ぎました。これは持続可能な社会の実現に向けた重要な貢献と言えるでしょう。

AIがモバイルデバイス市場にもたらす変革

AIが私たちの生活のさまざまな側面に影響を与える中、スマートフォン市場もその例外ではありません。新しいAI機能を搭載したデバイスの登場により、消費者行動に明らかな変化が現れ始めています。これまでは、主に物理的な故障や性能の低下がデバイスの買い替え理由でしたが、今後はAI機能が重要な判断材料になる可能性が高いです。

スマートフォンメーカーも消費者のこうした期待に応えるべく、より高度なAI機能を搭載した製品の開発に注力しています。例えば、写真や動画の編集機能の向上、音声アシスタントの高度化、翻訳機能の充実、バッテリー管理の最適化など、AIの活用範囲は日々拡大しています。

これらの進化は単なる技術的な改良以上の意味を持ちます。消費者の日常生活において、スマートフォンはますます不可欠なツールとなり、その機能性への期待も高まっています。AIはそうした期待に応える重要な技術として位置づけられているのです。

まとめ

Assurantの2024年モバイル下取り・アップグレード業界トレンドレポートから、AIがモバイルデバイス市場に大きな変化をもたらし始めていることが明らかになりました。
消費者は次世代のAI機能に強い関心を示しており、それが買い替えサイクルの短縮化につながる可能性があります。

また、デバイスの下取りプログラムは消費者に経済的なメリットをもたらすだけでなく、環境保全にも貢献しています。
新しいデバイスの製造を抑制し、既存デバイスの再利用を促進することで、炭素排出の削減と廃棄物の削減に寄与しているのです。

AI技術の進化とそれを活用したモバイルデバイスの発展は、今後も続くでしょう。消費者のニーズとテクノロジーの発展が相互に影響し合いながら、モバイルデバイス市場は新たな段階へと進化していくことが予想されます。

(Via AssurantのAssurant 2024 Annual and Q4 Mobile Trade-in and Upgrade Industry Trends Reports」.)


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