Apple WatchとMasimoの訴訟の行方:血中酸素センサーは再び使えるのか?
医療機器メーカーMasimoとAppleの間で繰り広げられている法廷闘争が、新たな展開を見せています。
紛争の核心:血中酸素センサーを巡る3つの戦い
AppleとMasimoの法的争いは、実に3つの異なる裁判が同時進行している複雑な様相を呈しています。
中心となっているのは、Apple Watchに搭載された血中酸素センサー技術です。この技術は、指先や手首の血流を光で計測し、体内の酸素濃度を推定するもので、現代のウェアラブルデバイスにおける重要な健康管理機能の一つとなっています。
現在進行中の主な訴訟は以下の3つです。まず、Masimoによる営業秘密侵害訴訟。次に、米国際貿易委員会(ITC)による血中酸素センサー機能の販売差し止め命令に関する件。そして、AppleがMasimoを特許侵害で訴えた反訴です。
営業秘密訴訟:17億ドルから権利の主張へ
現在カリフォルニア州の裁判所で行われている裁判は、当初とは様相が大きく変わっています。Masimoは2020年に、Appleが自社の従業員を不当に引き抜き、営業秘密を盗用したとして訴訟を起こしました。
当初、Masimoは18.5億ドル(約2,775億円)という巨額の損害賠償を請求していました。しかし、2023年4月の陪審裁判では、Masimoの主張の半分以上が却下され、最終的に陪審員の意見が分かれて審理やり直しとなりました。
興味深いことに、Masimoは金銭的な請求を全て取り下げ、代わりに裁判官による判決(ベンチトライアル)を選択しました。これは、Apple Watchに対する差し止め命令の獲得を目指す戦略的な判断と見られています。
血中酸素センサー機能の行方:AppleのITC命令への対応
もう一つの重要な展開は、ITCによる血中酸素センサー機能の販売差し止め命令です。この命令に対し、Appleは巧妙な対応を見せました。血中酸素センサー機能を無効化することで、Apple Watchの販売を継続することに成功したのです。
しかし、Appleはこの状況を一時的なものと考えており、以下の対策を進めています:
- ITC命令の控訴審での覆しを目指す
- 代替技術の開発検討
- 血中酸素センサー機能の合法的な再導入方法の模索
Masimoの矛盾する行動
この紛争で興味深いのは、Masimoの行動です。ITCでの勝利を得るため、Masimoは2022年に独自のスマートウォッチ「W1 Freedom」を急いで開発しました。
しかし、このデバイスがAppleの特許を侵害していることが、先週の陪審裁判で認定されました。
今後の展望:技術革新と法的課題の狭間で
この事例から、ウェアラブル技術の進化がもたらす新たな課題が浮き彫りになっています。特に医療機器としての側面を持つデバイスにおいて、技術革新と知的財産権の保護のバランスをどう取るかが、今後も重要な課題となることでしょう。
(Via MacRumors.)
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