EUがAppleに初のDMA制裁金を科す見通し~AppStore規制違反で巨額制裁も

EUがAppleに初のDMA制裁金を科す見通し~AppStore規制違反で巨額制裁も

デジタルプラットフォームの規制を強化する欧州連合(EU)が、世界的IT企業のAppleに対して初となる制裁金を科す見通しとなりました。

この動きは、テクノロジー業界に大きな影響を与える可能性があり、デジタル市場の公正な競争環境の確保という観点から、世界中から注目を集めています。

DMA違反の疑いと制裁金の概要

EUの競争当局は、Appleがデジタルマーケット法(Digital Markets Act、以下DMA)に違反している可能性があるとして調査を進めてきました。具体的な違反の疑いは、アプリ開発者がApp Store以外の場所でより安価な取引やオファーをユーザーに案内することを制限している点にあります。


制裁金の規模については、Appleの1日あたりの全世界売上高の5%に相当する可能性があり、金額にして10億ドル(約1,500億円)以上になる見込みです。これは、EUがテクノロジー企業に科す制裁金としては過去最大級となります。

制裁金の算定基準

DMAの規定では、違反企業に対して以下のような制裁金を科すことができます:

  • 最大で全世界年間売上高の10%相当
  • 継続的な違反に対する定期的な制裁金
  • 違反が是正されるまでの期間に応じた追加的なペナルティ

AppleのDMAへの対応と変更点

Appleは2024年1月にDMAへの対応計画を発表し、3月にはiOS 17.4でその実装を開始しました。主な変更点は以下の通りです:

  • App Store手数料の大幅な引き下げ
  • アプリマーケットプレイス要件の改訂
  • Core Technology Fee構造の変更
  • Web配信の追加

さらに8月には、以下の追加的な変更も実施されています:

  • ブラウザ選択画面の改善
  • デフォルトアプリの変更オプション
  • 削除可能なアプリの拡大

EUの規制当局の見解と今後の展開

マMargrethe Vestager EU競争政策担当委員は、今月中に退任を控えていますが、その前に制裁金の決定が行われる可能性があります。しかし、最終的な決定はまだ行われておらず、以下のような可能性も残されています:

  • 制裁金の決定が年末まで延期される可能性
  • 定期的なペナルティ支払いが課される可能性
  • さらなる法令遵守要件が追加される可能性

iPadへの規制拡大の可能性

欧州委員会は最近、iPadの相互運用性が十分かどうかの評価も開始しました。これは、EUのデジタル規制がモバイルデバイス全般に拡大される可能性を示唆しています。

Appleの主張と対応姿勢

Appleは一貫して、自社の対応がDMAに準拠していると主張しています。同社の公式声明では、「当社の計画はDMAに準拠していると確信しており、欧州委員会の調査に対して建設的に関与し続けます」と述べています。

Appleによる具体的な対応策

  • アプリ開発者とのコミュニケーション改善
  • 代替購入オプションの提供
  • 外部決済システムの許可
  • 取引報告システムの整備

この問題が業界に与える影響

このEUの規制強化は、デジタルプラットフォーム業界全体に大きな影響を与える可能性があります。以下のような変化が予想されます:

  • プラットフォーム運営の透明性向上
  • 競争環境の改善
  • 消費者選択肢の拡大
  • 新規事業者の参入機会増加

他のテクノロジー企業への影響

GoogleやMeta(旧Facebook)など、他の大手テクノロジー企業も同様の規制強化の対象となる可能性があり、業界全体での対応が求められています。

今後の展望と課題

この問題は、デジタル時代における規制と革新のバランスをどのように取るかという重要な課題を提起しています。以下のような点が今後の焦点となるでしょう:

  • 公正な競争環境の確保
  • 消費者利益の保護
  • イノベーションの促進
  • グローバルなデジタル規制の調和

求められる対応

  • プラットフォーム事業者の自主的な改革
  • 規制当局との建設的な対話
  • 透明性の高い運営体制の構築
  • ユーザー視点に立った改善

EUの規制アプローチに潜む政治的思惑

EU加盟国の「数の力」戦略
EUの規制アプローチには、単独の加盟国では対抗できない巨大テクノロジー企業に対して、27カ国の統合された市場力を活用しようとする戦略的意図が見え隠れします。
DMA Apple Pencil_04.
規制の目的と結果に矛盾が生じる可能性も指摘されています。
例えば、競争を促進することが目的であるにもかかわらず、過度な規制が企業の技術革新を妨げる結果となり、最終的には市場全体の活力を削ぐ可能性があります。
このように、DMAの規制は理論上は公正な競争を促進するものの、その適用によってかえって市場の停滞や技術革新の減少を招くリスクが存在するのです。

(Via 9to5Mac.)


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