2025年4月に発表されたCounterpoint Researchの最新調査データによると、2025年第1四半期(1月〜3月)におけるAppleのMacシリーズの出荷台数が前年同期比で17%増加しました。この大幅な成長は、M4チップを搭載した新製品の発売と市場のダイナミクスによるものであると報告されています。

世界のPC市場全体でも出荷台数が6.7%増加し、合計で6,140万台に達しました。今回は、この急成長の背景と今後の見通しについて詳しく解説します。

Mac出荷台数の急増を支えた要因

M4搭載モデルの連続投入が牽引

Appleの出荷台数増加の最大の要因は、AI機能を搭載したM4チップベースのMacシリーズの好調な販売です。

2024年10月28日に発売されたM4 iMacを皮切りに、11月8日にはM4 Mac miniとM4 MacBook Pro、そして2025年3月12日にはM4 MacBook AirとM4 Max Mac Studioが市場に投入されました。このように短期間で次々と新製品を発売したことが、2025年第1四半期における前年比17%という驚異的な成長率につながったのです。

M4チップは、AIタスクを高速に処理する能力を持ち、ユーザーからの評価も高いものとなっています。特に、AIワークロードを処理するための専用エンジンが搭載されていることで、クリエイティブな作業や複雑な計算処理においても優れたパフォーマンスを発揮しています。

こうした技術的優位性が、競合他社との差別化につながり、市場シェアの拡大に貢献しているのです。

世界のPC市場全体の成長要因

Appleだけでなく、世界のPC市場全体も6.7%という健全な成長を記録しています。この成長を支えた主な要因として、以下の二つが挙げられます。

まず一つ目は、米国の輸入関税に先立ってPCベンダーが出荷を加速させたことです。米国の関税政策による不確実性に対応するため、メーカー各社が米国向け製品の出荷を前倒しで行った結果、第1四半期の出荷台数が一時的に増加したと考えられます。

二つ目の要因は、Windows 10のサポート終了が迫る中、AI対応PCへの移行が進んでいることです。マイクロソフトのWindows 10は、近い将来にサポートが終了する予定であり、多くの企業や個人ユーザーが新しいOSに対応したPCへのアップグレードを検討しています。こうした背景から、AI機能を搭載した新しいPCへの需要が高まっているのです。

主要PCメーカーの動向

各社の業績と市場シェアの変化

第1四半期において、LenovoはAppleと並んで11%という力強い成長を遂げました。AI対応PCへの拡大と多様な製品ポートフォリオにより、Lenovoは引き続き最大の市場シェアを維持しています。

HPとDellも、米国市場での需要増加の恩恵を受けており、それぞれ6%と4%の前年比成長を記録しました。この結果、HPは第2位、Dellは第3位の市場シェアを維持しています。
Apple Silicon M4 Mac_02.
Counterpoint Researchのシニアアナリスト、William Li氏は「今後の競争環境は、OEM(相手先ブランド製造会社)がサプライチェーンと製造拠点を多様化する能力に加え、シリコンからソフトウェア、モデルベンダーまで重要なエコシステムパートナーシップを構築することで、最高のAI PC体験を提供するポジショニングによって形作られるでしょう」とコメントしています。

サプライチェーンの課題と対応

グローバルなPC製造は依然として中国を中心に展開されており、短期間で関税リスクを軽減することは業界にとって大きな課題となっています。

最近、米国がラップトップに対する関税を免除したにもかかわらず、トランプ政権が次の四半期内に半導体やその他のテクノロジー製品に新たな関税を課す計画であるため、不確実性は続いています。

このような状況下、ラップトップのODM(委託設計製造)会社やEMS(電子機器製造サービス)会社は、製造拠点を中国からベトナム、インド、メキシコなどの他の国々へシフトする動きを加速させると予想されています。

これらの国々も異なるレベルの関税に直面していますが、PC各社にとっての最優先事項は、米国市場向けのすべての製品の製造を中国以外の製造ラインに移すことであると考えられます。

今後の見通しと課題

一時的な成長か、継続的なトレンドか

Counterpoint Researchは、2025年第1四半期に見られた出荷台数の急増は短命である可能性が高いと指摘しています。在庫レベルは今後数週間で安定する見込みであり、米国の輸入関税の影響は2025年のPC成長モメンタムを鈍化させると予想されています。

また、米国の関税政策は2025年のPC業界に不確実性をもたらしており、メーカーはコスト上昇や潜在的な需給収縮に直面しています。スマートフォンやラップトップなどの特定の電子機器に対する一時的な免除措置は一時的な救済を提供していますが、半導体に対する予想される米国の関税は、サプライチェーンを混乱させ、AI基盤や機器に対する需要と投資を抑制する恐れがあります。

AI PC市場の今後の展望

Counterpoint Researchのアソシエイトディレクター、David Naranjo氏は「米国市場は、AI PCがその能力を示し、高度なAI対応デバイスを販売するための最も重要な市場であり続けています。高関税や関税政策の不確実性は、消費者や企業が追加コストのかかる新しいデバイスを購入することを思いとどまらせる可能性が高く、結果として成長と普及率の向上が抑制されるでしょう。また、世界経済の不確実性の継続も、2025年のPC市場の中単位の前年比出荷成長予測に対するダウンサイドリスクとなるでしょう」と述べています。

まとめ

2025年第1四半期、AppleのMacシリーズは前年比17%という印象的な出荷増加を達成しました。
この成長はM4チップを搭載した新製品の好調な販売によるものであり、世界のPC市場全体も6.7%成長しています。
しかし、米国の関税政策による不確実性や在庫レベルの正常化により、この急成長は一時的なものである可能性があります。

今後、PC業界はサプライチェーンの多様化とAI機能の強化という二つの課題に取り組むことになるでしょう。
特に、消費者や企業のニーズに応える高性能なAI対応デバイスの開発が、各メーカーの競争力を左右することになると予想されます。

(Via Counterpoint Research.)


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