トランプ政権が発表した世界各国に対する大規模な関税政策は、多くの企業に影響を与えていますが、特にグローバルなサプライチェーンを持つAppleにとって深刻な課題となっています。

Appleが直面している関税問題とその対応策について見て行きます。

トランプ政権の新関税政策とAppleへの影響

先週、トランプ政権は世界のほぼすべての国に対して厳しい関税計画を発表しました。この発表を受けて、Appleの株価は約10%も下落する事態となりました。なぜこれほどの影響があったのでしょうか。


Appleのビジネスモデルは、海外での戦略的な製造に大きく依存しています。iPhoneやMacをはじめとする製品は、中国やベトナム、インドなど複数の国で生産されており、これらの国々から米国へ輸入されています。そのため、輸入品に高額な関税がかかると、Appleの製品コストが大幅に上昇することになります。

具体的な関税率を見てみると、中国からの輸入品には54%、インドからは26%、ベトナムからは46%の関税が課される予定です。さらに他の国々にも高率の関税が設定されています。このような状況では、Appleが現在の価格で製品を販売し続けることは非常に困難になります。

Apple製品の価格設定の歴史

Appleの価格戦略について考える前に、同社の過去の価格設定について理解しておくことが重要です。

興味深いことに、Appleは2017年にiPhone Xを発売して以来、ハイエンドiPhoneの基本価格を999ドルに維持し続けています。この6年以上もの間、価格を変えていないのです。また、多くのApple製品は過去10年間で大きな価格変更がありませんでした。

このような価格の安定性は、Appleのブランド戦略の重要な要素となっています。しかし、今回の関税政策はこの戦略を根本から揺るがすものとなるでしょう。

Bloombergが提案するAppleの対応策

BloombergのMark Gurman氏は、Appleがこの関税問題に対処するためのいくつかの方法を提案しています。

1. サプライヤーとの交渉による製造コスト削減

Appleは部品メーカーや製造業者に対して、より良い価格を提供するよう交渉することで、製造コストを下げる努力をする可能性があります。Appleのような巨大企業は、サプライヤーに対して強い交渉力を持っているため、ある程度のコスト削減は可能かもしれません。

2. 利益率の調整

Apple製品の平均利益率は約45%と言われています。この高い利益率の一部を削ることで、関税によるコスト増加を吸収するという選択肢もあります。短期的には株主からの反発もあるかもしれませんが、長期的な市場シェアを維持するためには有効な戦略かもしれません。

3. 短期的な価格調整

Appleは「状況分析期間」として、短期的な価格調整を行う可能性もあります。これは関税の影響を完全に把握し、最適な長期戦略を練るまでの一時的な対応策です。

4. サプライチェーンの多様化

おそらく最も重要な長期戦略は、サプライチェーンのさらなる多様化でしょう。Appleはすでに中国への依存度を下げる努力をしていますが、この動きをさらに加速させる必要があります。ただし、Gurman氏によれば、製造拠点をアメリカに移すという選択肢は現実的ではないようです。

貿易協定の可能性

関税が適用される予定の4月9日(水曜日)までに、ベトナムやインドなどの国々はトランプ政権との貿易協定締結に向けて積極的に交渉を進めています。これらの国との協定が結ばれれば、Appleの一部の製造拠点に対する関税の影響は軽減される可能性があります。

しかし、Appleの最大の製造拠点である中国は、現時点では貿易協定の交渉に積極的ではないとされています。Appleが手頃な価格で製品を販売し続けるためには、中国への依存度を大幅に削減する必要があるでしょう。

関税前の製品確保戦略

Appleはこの関税問題に備えて、すでに対策を講じています。報道によれば、Appleは関税適用前に大量の製品を米国内に輸入・在庫として確保しているとのことです。

米国内に既に入っている製品には関税がかからないため、この戦略によってAppleは少なくとも一定期間は通常の価格で製品を販売し続けることができます。理論的には、9月の次期iPhoneの発売まで価格調整を延期することも可能です。

ただし、この戦略にはリスクもあります。新しいiPhoneを発表する際に、ハードウェアのアップグレードよりも価格上昇が注目を集めてしまう可能性があるのです。

Tim Cook CEOの動き

Gurman氏は、Appleが価格引き上げを恐れているわけではないが、関税の影響をできるだけ軽減するためにあらゆる手段を講じる可能性が高いと指摘しています。

また、AppleのTim Cook CEOは、トランプ前大統領の第1期政権時代にも関税の免除を求めて交渉し、一定の成果を上げた実績があります。今回も同様の免除を求めて交渉する可能性は十分にあるでしょう。

まとめ

トランプ政権の新たな関税政策は、Appleのような国際的なサプライチェーンを持つ企業に大きな影響を与えます。
Appleは様々な方法でこの問題に対処しようとしていますが、長期的にはサプライチェーンの多様化が最も重要な戦略となるでしょう。

消費者としては、今後のApple製品の価格動向に注目する必要があります。
短期的には在庫確保などの対策により価格が維持される可能性もありますが、長期的には何らかの価格調整が行われる可能性が高いでしょう。

(Via 9to5Mac.)


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