スマートフォン画面の覇者、Corning社に対するEU独占禁止法調査:その背景と影響

スマートフォン画面の覇者、Corning社に対するEU独占禁止法調査:その背景と影響

欧州連合(EU)が、スマートフォン画面の保護ガラス市場で圧倒的なシェアを誇るCorning社に対する独占禁止法調査を開始しました。同社の市場支配力と取引慣行が競争を阻害している可能性があるとして、詳細な調査が行われることになります。

Corning社とは – スマートフォンガラスの革新者

Corning社は、スマートフォンの画面保護ガラスとして広く知られる「Gorilla Glass」の製造企業です。同社は2007年の初代iPhoneから、Appleの重要なサプライヤーとして長年にわたり協力関係を築いてきました。


特に注目すべきは、同社が2016年時点でスマートフォン画面市場の実に73%というシェアを保持していたことです。

現在では、スマートフォンやタブレット、ノートパソコン、ウェアラブルデバイスなど、ディスプレイ市場全体の40%を占める主要企業となっています。iPhone 12以降に採用されている「Ceramic Shield(セラミックシールド)」も、Corning社が開発した技術です。
Corning vs EU_04.

EUが指摘する競争上の懸念点

欧州委員会は、Corning社の市場での行動について、以下のような具体的な懸念を示しています:

1. 独占的供給契約の存在

  • スマートフォンメーカーに対し、必要なガラスのほぼ全量をCorning社から調達するよう求める契約を締結
  • 契約を遵守する企業に対して、リベートを提供
  • 競合他社からの提案があった場合、その内容をCorning社に報告することを要求

2. ガラス加工業者との取引における制限

  • 原材料ガラスの加工業者に対しても、独占的な供給契約を強要
  • 特許に関する異議申し立てを制限する条項を契約に含める

市場支配力の実態と影響

Corning社の「Gorilla Glass」は、その製品名が一般名詞化するほど、スマートフォン用保護ガラスの代名詞となっています。各世代の製品改良によって、より強固な保護性能を実現してきました:

  • Gorilla Glass 4:競合製品と比較して「2倍の強度」を実現
  • Gorilla Glass 5:1.6メートルからの落下でも80%の確率で破損を防止
  • Gorilla Glass 6:繰り返しの衝撃に対する耐性を強化

Corning vs EU_02.

Appleとの密接な関係

Corning社とAppleの関係は特に注目に値します。Appleは同社の技術を重要視し、以下のような投資を行っています:

  • 2017年:Advanced Manufacturing Fund(先進製造基金)からの初期投資
  • 2019年:投資の拡大
  • 2021年:4,500万ドルの追加投資(Ceramic Shield技術の開発支援)

調査の今後と市場への影響

欧州委員会の調査は、以下の点に焦点を当てることが予想されます:

  • 市場競争への影響
  • 消費者選択の制限
  • 価格への影響
  • イノベーション阻害の可能性

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Corning社は調査に対して意見を提出する機会が与えられていますが、この調査結果は世界のスマートフォン市場に大きな影響を与える可能性があります。

まとめ

EU競争法の目的は、単一市場における競争を促進し、消費者にとってより良い製品やサービスが提供される環境を整備することです。市場における公正な競争は、イノベーションを促進し、経済成長を支える重要な要素です。EUは、この目的を達成するために、独占禁止行為や市場支配力の濫用などを規制しています。

Corning社のケースに関して言えば、EUは同社の独占的な地位と排他的な契約が競争を阻害し、消費者の選択肢を狭めている可能性があるとみて調査を開始しました。これは、EU競争法の目的に照らして正当な行為と言えるでしょう。

しかし、同時にEUの政策が常に公正で客観的であるとは限りません。時には、EU域内の産業保護や特定の加盟国の利益を優先するような政策がとられることもあります。また、EUの巨大な市場規模を背景に、グローバル企業に対して過剰な要求を突きつけるケースもあるかもしれません。

Corning社に対する調査についても、本当に公正な競争環境の確保と消費者の利益保護を目的としたものなのか、それとも他の意図が隠されているのか、慎重に見極める必要があります。例えば、EU域内の競合企業を優遇するためにコーニング社を標的にしている可能性なども考慮に入れ、調査の進展や結果を注意深く見守ることが重要です。

(Via Ars Technica.)


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