最近、AppleのApp Storeに関するニュースが賑やかですよね。「アプリ開発者は、もっと自由に自分たちのサイトでアプリを売れるようにすべきだ!」なんて声も聞こえてきます。確かに、開発者さんにとっては、Appleに支払う手数料が減るのは大きなメリットかもしれません。

でも、ちょっと待ってください。私たちユーザーにとって、本当にApp Store以外での購入が魅力的なのでしょうか?

実は、投資会社のMorgan Stanleyが興味深いレポートを発表していて、これがなかなか示唆に富んでいるのです。「多くのユーザーは、結局App Storeを使い続けるんじゃないの?」という内容なんです。

この記事では、なぜ多くのiPhoneユーザーがApp Storeから離れようとしないのか、その背景にあるリアルな理由を、Morgan Stanleyのレポートを紐解きながら、やさしく説明

していきます。この記事を読めば、App Storeの未来や、私たちユーザーの賢い選択について、きっと新しい発見があるはずです!
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App Storeの影響力、実はそれほど揺るがない?Appleの収益への本当のところ

まず、ことの発端から少しお話ししましょう。人気ゲーム「Fortnite」を開発するEpic GamesとAppleの間で、大きな裁判沙汰になったのは記憶に新しいですよね。その結果の一つとして、Appleは「反ステアリング指示(anti-steering instructions)」、つまり開発者が自社サイトなどApp Store以外の支払い方法へユーザーを誘導することをAppleが妨害できなくなる指示に従うことになりました。

これだけ聞くと、「Appleもいよいよピンチか?」なんて思っちゃいます。一部では「Appleのオウンゴールだ」なんて厳しい声も上がっています。

ところが、Morgan Stanleyのアナリストたちは、この件がAppleの収益に与える影響は「取るに足りないほど小さい」と見ているんです。彼らの分析によると、米国国内のApp StoreがAppleにもたらす年間収益は約110億ドル。

これはApple全体の収益から見ると約3%に過ぎず、企業の収益力を示す指標の一つである「1株あたりの利益(EPS: Earnings Per Share)」でみても、全体の約7%程度だそうです。もちろん、110億ドルというのはとんでもない金額ですが、Appleという巨大企業全体から見れば、一部門の収益変動リスクとしては、そこまで大きくないのかもしれませんね。

ユーザーはなぜApp Storeを離れたくないのか?リアルな声と開発者のジレンマ

さて、ここからが本題です。Morgan Stanleyは、2021年から2023年にかけて、実際にiPhoneユーザーにアンケート調査を行いました。その結果、「App Store以外でアプリを直接開発者から買ってもいいよ」と考えている人は、実はかなり少ないことがわかったんです。

具体的には、iPhoneユーザーのうち、「App Store外での購入も積極的に検討する(extremely likely)」と答えたのは、たったの5分の1程度。それ以外の人たちは、「もしApp Store以外で買うなら、最低でも35%は安くならないと魅力がないね」と考えているそうです。35%オフって、かなりの割引率ですね!

開発者側のジレンマ:30%割引は本当に可能?

ここで一つ、開発者側の事情も考えてみましょう。App Storeでアプリを売る場合、Appleに支払う手数料は、特に初年度のサブスクリプションなどでは最大30%と言われています。「じゃあ、その30%分をそのままユーザーに還元すればいいじゃないか!」と思うかもしれません。

しかし、現実はそう単純ではないんです。もし開発者が自社サイトで直接アプリを販売する場合、これまでAppleが肩代わりしてくれていたクレジットカードの決済処理や、国ごとの複雑な税金の計算・報告などを、すべて自分たちで行う必要が出てきます。これらには当然、新たなコストと手間がかかります。

ですから、開発者がApp Storeの手数料30%分をまるまる割引できるかというと、なかなか難しいのが実情です。もしかしたら、一部の開発者は「ロスリーダー(赤字覚悟の目玉商品)」として、期間限定で大きな割引を打ち出して、ユーザーを自社サイトに誘導しようとするかもしれません。

でも、それが継続的なビジネスとして成り立つか、そして本当に多くのユーザーがそれについてきてくれるかは、正直なところ、かなりハードルが高いと言わざるを得ません。まさに、開発者にとっては頭の痛い問題です。
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ユーザーがそれでもApp Storeを選ぶ6つの理由

では、なぜ多くのユーザーは、たとえ少し安くなる可能性があったとしても、慣れ親しんだApp Storeを使い続けたいのでしょうか?Morgan Stanleyの調査では、ユーザーがApp Storeを好む理由が、はっきりと浮かび上がってきました。人気が高かった順に見ていきます。

  1. 複数のサイトと金融情報を共有したくないから

  2.  - やっぱり、クレジットカード情報や個人情報を、あちこちのサイトに登録するのは不安ですよね。App StoreならAppleという信頼できる一つの窓口で済むので安心、というわけです。

  3. 複数のアカウントを管理したくないから

  4.  - アプリごとに新しいアカウントを作って、パスワードを覚えて…なんて、考えただけでも面倒くさい!App StoreならApple ID一つで全部管理できる手軽さが魅力です。

  5. (App Store外で購入する)メリットを特に感じないから

  6.  - よっぽど大きな価格差がない限り、わざわざ新しい購入方法を覚える手間を考えると、「別にApp Storeのままでいいや」と感じる人が多いようです。

  7. App Storeは既に自分の情報(支払い情報など)を登録してあるから速い

  8.  - 一度情報を登録してしまえば、次からはワンタップでアプリが買えちゃう。このスピード感と利便性は、忙しい現代人にとっては何物にも代えがたい価値があります。

  9. App Storeのセキュリティとプライバシーを信頼しているから

  10.  - Appleはセキュリティやプライバシー保護に力を入れているイメージがありますよね。怪しいアプリや詐欺サイトに出くわすリスクを考えると、App Storeの審査を経たアプリの方が安心、と感じるのも頷けます。

  11. Apple Gift Cardを使えたり、Apple Cardでキャッシュバックが受けられたりするから

  12.  - 普段からAppleの製品やサービスを使っている人にとっては、ギフトカードやクレジットカードのポイント還元なども見逃せないメリットです。

これらの理由を眺めていると、ユーザーは単に「安ければいい」というわけではなく、「安心感」「手軽さ」「利便性」「信頼性」といった、総合的な体験価値を重視していることがよくわかります。私自身も、新しいアプリを探すときは、まずApp Storeを開きますし、支払いもApple IDに紐付いた方法で済ませています。やっぱり慣れているし、安心なんですよね。

Appleの対抗策と、それでも揺るがない「牙城」

もちろん、アプリ開発者、特に体力のある大手開発会社は、ユーザーを自社サイトに引き込むために、様々な魅力的な特典を用意してくるでしょう。例えば、限定コンテンツの提供や、より手厚いサポートなどが考えられます。

しかし、Morgan Stanleyは、Appleもまた、ユーザーや開発者をApp Storeに繋ぎ止めるための強力な選択肢をいくつも持っていると指摘しています。Appleが必ずしもこれらの手段を講じるとは限りませんが、例えばこんなことができるかもしれない、とアナリストたちは予測しています。

  • 手軽に入手できるApp Storeクレジットの提供
  •  - 例えば、特定の条件を満たしたユーザーにApp Storeで使えるクレジットをプレゼントする、といったキャンペーンです。これなら、ユーザーは実質的にお得にアプリやコンテンツを楽しめますよね。

  • それらのクレジットをApple Oneバンドル(Apple MusicやiCloudストレージなどをまとめたサブスクリプションサービス)に組み込む
  •  - Apple Oneを利用しているユーザーにとっては、さらにメリットが増えることになります。Appleのエコシステム全体でユーザーを囲い込む戦略ですね。

  • App Store自体を完全にサブスクリプションベースにする
  •  - これはかなり大胆なアイデアですが、月額料金を支払えば特定のアプリが使い放題になる、といったモデルも将来的にはあり得るかもしれません。

Morgan Stanleyのアナリストたちは、これらの選択肢はすべてAppleが自社でコントロールできるものだと指摘しています。つまり、市場の状況を見ながら、柔軟に対応できる力を持っているということです。

そして、ここがMorgan Stanleyのレポートの核心部分なのですが、彼らは「Appleは、もしかしたら何もしなくても大丈夫かもしれない」とさえ考えているんです。なぜなら、仮に一部の開発者がユーザーを自社サイトに誘導できたとしても、App Storeから離れるユーザーは全体の5分の1にも満たないだろう、と予測しているからです。

そうなると、Appleにとってのリスクは、前述した年間110億ドルのApp Store収益の、さらに5分の1程度、つまり約20億ドル規模に留まるという計算になります。

これは、Apple全体のEPSから見ると約1.5%に過ぎず、Morgan Stanleyはこれを「実質的には丸め誤差の範囲だ」と表現しています。ちょっと衝撃的な見方ですよね。

さらに、Morgan Stanleyは、仮にAppleが他のサービス(例えばiCloudストレージの料金など)の価格を平均で5%引き上げたとしたら、このApp Storeでの潜在的な損失は完全に相殺できてしまう、とも試算しています。

こうした分析を踏まえ、Morgan StanleyはAppleの目標株価235ドルという評価を維持しているわけです。また、彼らは5月5日のレポートで示した、将来登場するであろうiPhone 17シリーズに関する、最も楽観的なケースと最も悲観的なケースの財務予測も改めて提示しているとのことです。
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まとめ

さて、Morgan Stanleyのレポートを通して、App Storeを巡る状況を見てきました。
結論として言えるのは、多くのユーザーにとって、App Storeの「利便性」「信頼性」、そしてApple製品を中心とした「エコシステムの強み」は非常に大きく、そう簡単には揺るがないということです。

もちろん、開発者にとっては手数料の問題は切実でしょうし、私たちユーザーにとっても、より多様な選択肢が増えることは歓迎すべきことかもしれません。
しかし、日々の生活の中でアプリを利用する際、多くの人は目先の数十円、数百円の価格差よりも、手間なく安心して使えることを優先する傾向がある、というのは納得できる話ではないでしょうか。

今後、Appleや開発者がどのような戦略を打ち出してくるのか、引き続き注目していく必要はありますが、少なくとも当面の間は、App Storeがアプリ入手と利用の中心であり続ける可能性が高いと言えそうです。
私たちユーザーとしては、こうした情報を踏まえつつ、自分にとって何が最も価値のある選択なのかを、冷静に見極めていくことが大切です。

(Via Apple Insider.)


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