Apple社が、裁判所の命令を受けてApp Storeのガイドラインを更新しました。これまでアプリ内での「外部購入へのリンク」について厳しく制限してきたAppleですが、ついに大きな変化が訪れたのです。

何が変わったのか、なぜ変わったのか、そしてこれからどうなっていくのかについて、わかりやすく説明していきます。

なぜAppleはガイドラインを変更したのか?

Apple社がApp Storeのガイドラインを更新したのは、単なる気まぐれではありません。実は、Yvonne Gonzalez Rogers判事から「外部購入へのリンクやバリアを撤去するように」という命令が出されたからなのです。


判事は、Appleの外部購入に関するルールが差し止め命令に対する「意図的な違反」だと判断しました。

Appleはこの判決に対して控訴する予定ですが、控訴中も命令に従うことを約束しています。正直なところ、Appleにとっては厳しい24時間だったようです。というのも、この裁判所の命令に加えて、決算結果についてもアナリストから厳しい見方をされていたからです。

ちなみに、この一連の出来事の背景には、Epic GamesとAppleの長い法廷闘争があります。Epic Gamesは今回の判決を大々的に祝福していて、他の開発者に対してもAppleの手数料を回避する方法をアドバイスしているみたいです。

Epic Gamesの最高経営責任者(CEO)からは和解の提案があったようですが、少なくとも現時点では、Appleはそれを受け入れる気配はないようです。

具体的に何が変わったのか?

では、実際にAppleのガイドラインでは何が変わったのでしょうか?この変更は9to5Macによって最初に発見されました。Appleは開発者に対してメールを送り、変更点について通知したそうです。

変更されたのは主に、外部決済とリンクに関する言語です。重要なのは、これらの変更がアメリカ合衆国のApp Storeで配信されるアプリにのみ適用されるという点です。具体的には、以下のようなガイドラインが更新されました:

  1. In-App Purchase(アプリ内課金)のルール:NFTコレクションの閲覧を許可するアプリであっても、米国のストアフロント以外では、アプリ内課金以外の購入メカニズムに顧客を誘導するボタン、外部リンク、その他の行動喚起を含めてはならない。
  2. 他の購入方法へのリンク:米国のストアフロントのアプリでは、ボタンや外部リンク、その他の行動喚起を含めるために特別な許可は必要ない。
  3. その他の購入方法:このセクションのアプリは、米国のストアフロントのアプリを除き、アプリ内でアプリ内課金以外の購入方法の使用を奨励することはできない。
  4. 「リーダー」アプリ:米国のストアフロントのアプリにボタン、外部リンク、その他の行動喚起を含めるためにこの権限は必要ない。

正直、ちょっとややこしいですよね。簡単に言うと、「米国のApp Storeでは、アプリ内で外部の決済方法へのリンクやボタンを置いてもOKになった」ということです。これまではAppleの手数料(通称「Apple税」)を回避するような外部リンクは認められていませんでしたが、米国では今後それが可能になるわけです。

開発者はどう反応している?

この変更を受けて、多くの開発者がすでにアプリの更新を提出し始めています。例えばSpotifyやPatreonといった企業は、この機会を利用して価格を明示し、アプリ内に外部リンクを配置することに飛びついています。

なぜAppleがこれまで外部リンクを許可しなかったかというと、収益の損失を恐れていたからです。Appleはアプリ内課金から通常30%の手数料を取っていますが、外部決済を許可すると、この収益が大幅に減少する可能性があります。この点について、判事は80ページにおよぶ判決文の中で「Cook CEOは間違った選択をした」と述べています。

実際、この変更はAppleにとって大きな痛手になる可能性があります。多くの開発者が外部決済にユーザーを誘導し始めれば、Appleの収益モデルに大きな影響が出るでしょう。ただ、ユーザーにとっては選択肢が増えるというメリットがあるかもしれません。

この変更は世界に広がる?

現時点では、この変更は米国のApp Storeでのみ適用されますが、将来的にはどうなるのでしょうか?

AppleのグローバルなApp Storeのルールの多くは、米国での運営方法に基づいています。そのため、もし今回の判決の要件が定着すれば、Appleがこれをグローバルスタンダードとして設定する可能性もあります。

ただし、Appleは現在この判決に対して控訴中であり、最終的にどのようになるかはまだわかりません。各国の法律や規制も異なるため、すべての国で同じルールが適用されるとは限らないでしょう。

この変更がユーザーにもたらす影響

この変更が私たち一般ユーザーにどのような影響をもたらすのでしょうか?

まず、アプリ内で外部の支払い方法へのリンクが提供されるようになると、より多くの支払いオプションから選択できるようになります。これにより、場合によっては割引価格でサービスを購入できる可能性があります。

というのも、開発者はAppleに30%の手数料を支払う必要がなくなるため、その分をユーザーに還元できるからです。

ただし、決済方法が多様化することで、セキュリティやプライバシーに関する懸念も生じる可能性があります。Appleのアプリ内課金システムは比較的安全で使いやすいという利点があるので、外部の決済システムを使用する際は注意が必要かもしれませんね。

また、アプリの使用体験にも変化が生じる可能性があります。アプリ内に外部リンクやボタンが増えることで、インターフェースが少し複雑になるかもしれません。

まとめ

今回のAppleのガイドライン変更は、表面的には小さな文言の変更に見えるかもしれませんが、その影響は非常に大きい可能性があります。
テック業界の巨人であるAppleが、裁判所の命令によってビジネスモデルの一部を変更せざるを得なくなったというのは、業界全体のパワーバランスに影響を与えるかもしれません。

開発者にとっては、Appleの「アプリ内課金」の制約から部分的に解放されることになり、より柔軟なビジネスモデルを構築できる可能性があります。
ユーザーにとっては、支払い方法の選択肢が増えるというメリットがあるでしょう。

ただし、この変更がどのように展開していくかはまだ不透明です。
Appleの控訴がどうなるか、そして他の国や地域にどのように影響するかは、今後も注目していく必要があるでしょう。

テクノロジーの世界は日々変化していて、時にはこのような大きな転換点が訪れます。
一般ユーザーとしては、こうした変化がどのようにサービスの利用体験を変えていくのか、興味深く見守っていきたいものですね。

(Via 9to5Mac.)


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