2025年2月21日、トランプ大統領は、米国のテクノロジー企業に対してデジタルサービス税(以下、DST)を課す国々への報復として、関税を再び課す方針を打ち出しました。
この決定は、GoogleやApple、Amazonといった米国を代表する企業が、海外で課される税金や規制によって不公平な扱いを受けているとの懸念から生まれたものです。
デジタルサービス税とは何か?
まず、デジタルサービス税とは何かを簡単に説明しましょう。これは、主にデジタルプラットフォームを提供する企業がその国で得た収益に対して課される税金のことです。
例えば、フランスやイギリス、カナダといった国々では、GoogleやFacebookが広告やサービスで稼いだお金の一部を税金として徴収しています。これらの国は、自国に物理的な拠点がなくてもビジネスを行う巨大テック企業から税収を得る方法として、この税を導入しました。
しかし、米国政府はこの税を「米国企業への差別」と捉えています。なぜなら、DSTの対象となる企業はほとんどが米国に本社を置く巨大テック企業であり、ヨーロッパや他の国の企業はあまり影響を受けていないからです。
トランプ大統領は、「外国が米国の税基盤を奪うのは許さない」と強い姿勢を示しており、この問題を解決するために報復関税を検討しているのです。
トランプ大統領の新たな方針
トランプ大統領は2月21日、ホワイトハウスで大統領令に署名し、USTR(米国通商代表部)に対して、DSTを課す国々への調査を再開するよう指示しました。
この調査は、彼の最初の任期中にも行われていたもので、当時はフランスやイギリスなどの国が米国企業を不当に扱っていると結論づけられました。その結果、特定の輸入品に対して関税を課す準備が進められていたのです。
今回の大統領令では、さらに調査対象を広げ、新たにDSTを導入した国も調べるとしています。トランプ大統領は記者会見で、「他の国々が我々にしていることはひどい」と述べ、特にカナダとフランスを名指ししました。
ホワイトハウスが発表した資料によると、これらの国はDSTで年間5億ドル以上を徴収しており、世界全体では20億ドルを超える規模に達しているそうです。この数字を見ると、米国企業がどれだけ大きな負担を強いられているかがわかります。
なぜ今、関税を復活させるのか?
では、なぜトランプ大統領は今このタイミングで関税を復活させようとしているのでしょうか。その理由の一つは、彼が再選後すぐに米国の経済的な利益を最優先にする姿勢を明確に示したいと考えているからです。
初日の就任時に、彼は約140カ国が合意していた15%のグローバル最低法人税から米国を離脱させると宣言しました。この税は、企業がどこで利益を上げても一定の税金を払うルールでしたが、米国議会が批准しなかったため、事実上機能していませんでした。
さらに、DSTに代わる国際的な税制ルールを作る交渉も行き詰まっています。バイデン政権時代には、関税の発動を一時停止して話し合いを進める方針でしたが、結局大きな進展はありませんでした。トランプ大統領はこうした状況を見て、「話し合いだけでは解決しない」と判断し、強硬策である関税に踏み切ったのです。
関税がもたらす影響とは?
この報復関税が実際に発動されると、どのような影響があるのでしょうか。
まず、対象となる国からの輸入品に追加の税金がかかるため、例えばフランスの化粧品やイタリアのハンドバッグ、カナダの衣料品などが値上がりする可能性があります。
2021年のUSTRの発表では、イギリスからの約8億8700万ドル分の商品や、イタリアからの約3億8600万ドル分の商品に25%の関税を課す計画が示されていました。これが再び実行されれば、米国の消費者は普段使っている商品の価格上昇を感じるかもしれません。
一方で、米国企業にとっては、DSTによる負担が軽減される可能性があります。トランプ大統領の考えでは、関税によって他国がDSTを見直せば、GoogleやAppleといった企業が海外で払う税金が減り、米国経済に還元されるというわけです。ただし、他国が報復として米国製品に追加関税をかけてくると、貿易戦争に発展するリスクもあります。
EUの規制にも注目
今回の大統領令では、DSTだけでなく、EU(欧州連合)の技術規制にも目を向ける方針が示されました。特に、EUの「Digital Markets Act」や「Digital Services Act」が米国企業に不利な影響を与えているかどうかを詳しく調べるとのことです。
これらの法律は、巨大テック企業の市場独占を防ぎ、言論の自由やコンテンツの管理に影響を与えるものですが、米国側からは「検閲を助長する」との批判も出ています。
例えば、Reutersによると、Googleは最近EUの規制当局から「Digital Markets Act」に違反していると指摘され、検索結果の改善策を提案したものの、受け入れられなかったそうです。こうした動きが続けば、米国とEUの間で新たな摩擦が生まれるかもしれません。
今後の展望と私たちの生活への影響
トランプ大統領の関税政策がどこまで進むかはまだわかりません。具体的な関税率や対象商品の規模は明らかにされていませんが、過去の例からすると、数億ドル規模の輸入品に25%程度の関税が課される可能性があります。これが現実となれば、私たちの身近な商品の価格が上がり、日常生活にも影響が出てくるかもしれません。
一方で、この政策が米国企業の競争力を高め、技術革新を後押しする可能性もあります。デジタル経済がますます重要になる中で、米国がどのように自国の利益を守っていくのかは、世界中が注目するテーマです。
私たちもニュースを見ながら、この動きがどうなるのかを一緒に考えていくと面白そうですね。
(Via Reuters.)
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