Appleが開発中の新しいスマートホームハブデバイスが当初予定されていた3月の発表から延期されることになりました。

この延期の主な理由は、デバイスの中核機能となるSiriの新機能開発の遅れにあるようです。業界アナリストのMark Gurman氏によると、Siriの機能強化が遅れているため、それに依存するスマートホームハブも必然的に延期されることになったとのことです。

Appleのスマートホーム戦略とその課題

Appleのスマートホーム分野における取り組みは、これまで他社に比べて控えめなものでした。HomePodシリーズは高音質を売りにしていますが、Google NestやAmazon Echoシリーズのように幅広い機能を持つスマートホームのハブとしては十分な機能を備えているとは言えない状況でした。


特に音声アシスタントのSiriは、GoogleアシスタントやAmazon Alexaと比較して機能面で遅れをとっていると多くのユーザーや専門家から指摘されています。Siriは2011年のiPhone 4S導入時には革新的な技術でしたが、その後の発展は競合他社に比べて緩やかで、特に自然な会話能力や複雑な指示の理解、サードパーティアプリとの連携などの面で課題が残っていました。

こうした背景から、Appleが本格的なスマートホームハブデバイスを開発しているというニュースは、多くのAppleファンや技術愛好家から期待を集めていました。しかし、Gurman氏の報告によれば、このデバイスはSiriの新機能に一部依存する設計となっており、Siriの開発遅延に伴って発売も延期せざるを得なくなったということです。

社内テストプログラムの開始

公式発表の延期にもかかわらず、Appleは新しいスマートホームハブの社内テストプログラムを開始したと報じられています。このプログラムでは、選ばれた社員がデバイスを自宅に持ち帰り、実際の使用環境でフィードバックを提供することができます。

この種の社内テストはAppleにとって珍しいものではなく、新製品の発売前に潜在的な問題点を発見し、ユーザー体験を向上させるための重要なステップです。社員が日常生活の中でデバイスを使用することで、実験室環境では気づかなかった問題点や改善点が明らかになることが期待されています。


このテストプログラムの実施は、Appleが新しいスマートホームハブの開発を真剣に進めており、単に延期しただけで計画を放棄したわけではないことを示しています。公式発表の延期は、完成度の低い製品を市場に投入するよりも、十分に磨き上げられた製品を提供することを優先するAppleの姿勢の表れとも言えるでしょう。

新スマートホームハブの噂されている仕様

延期が報じられている新しいスマートホームハブですが、これまでのリーク情報や報道から、いくつかの特徴が明らかになっています。これらの情報は未確認のものですが、Appleが目指している製品像を理解する上で参考になります。

まず、このデバイスは7インチの正方形ディスプレイを備え、画面の周囲には太めのベゼル(枠)が配置されると言われています。デザイン面ではiPadとHomePodの中間的な外観になると予想されており、トップには写真や動画撮影用のカメラが搭載されるとのことです。

機能面では、内蔵の充電式バッテリーを備えており、電源コードからの解放時間も確保できるようです。これにより、家の中での持ち運びやレイアウト変更の際の柔軟性が向上すると考えられます。

最も注目すべき点は、このデバイスが新しいオペレーティングシステム「homeOS」を搭載するという点です。現在AppleのスマートホームデバイスであるHomePodは基本的にはtvOSの変種を実行していますが、新しいOSの導入は独立したプラットフォームとしての位置づけを強化するものと言えます。

また、このデバイスはFaceTimeなどのビデオアプリケーションに重点を置いており、多くのAppleアプリをサポートすると予想されています。さらに、iPhone 14以降で導入された「スタンバイ」モードにインスパイアされたダッシュボード機能や、スマートホームデバイスを簡単に制御する機能も備えるとのことです。

加えて、Appleが力を入れている「Apple Intelligence」(AI機能)にも対応するとされており、これがSiriの機能強化と密接に関連している可能性があります。Siriの進化が遅れているため、これらの高度なAI機能の実装にも影響が出ていると考えられます。

Appleのスマートホーム戦略の今後

Appleのスマートホーム市場における戦略は、これまで慎重なものでした。HomeKitというスマートホームプラットフォームを提供してはいるものの、Google、Amazon、Samsungなどの競合他社に比べると、エコシステムの広がりや対応デバイスの数では遅れをとっていました。

しかし、Matter規格への対応やHomePodの機能拡張など、近年はスマートホーム分野への注力が目立つようになっています。新しいスマートホームハブの開発は、こうした流れの中でAppleがスマートホーム市場において存在感を高めるための重要な一歩と位置づけられています。

今回の延期は短期的には残念なニュースですが、長期的にはより完成度の高い製品の登場につながる可能性があります。Appleはこれまでも、「初めてのものではなく、最高のものを作る」という哲学を持っていました。新しいスマートホームハブも、市場の期待に応えるクオリティを備えた製品として登場することが期待されています。

Siriの機能強化がこのデバイスの成功の鍵を握っていることは間違いありません。音声インターフェースはスマートホームデバイスにとって最も自然な操作方法の一つであり、Siriが競合製品と同等以上の能力を持つことが、このデバイスの市場での成功には不可欠です。

まとめ

Appleの新しいスマートホームハブは、Siri機能の遅延により当初予定されていた3月の発表から延期されることになりました。
しかし、社内テストプログラムが始まっていることから、開発自体は着実に進んでいると考えられます。

7インチのディスプレイ、内蔵バッテリー、新しいhomeOS、ビデオアプリケーションへの重点、スマートホーム制御機能、Apple Intelligence対応など、魅力的な機能が噂されている本製品は、発表が延期されても多くのユーザーから期待を集めています。

Appleがスマートホーム市場でより大きな存在感を示すためには、このデバイスの成功が重要です。

(Via 9to5Mac.)


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