AppleがGoogle Geminiで次世代Siriを開発検討中|AI競争の新展開

Appleが次世代Siriの開発において、Google GeminiのAIモデル採用を本格検討していることが判明しました。これまでOpenAIやAnthropicとの連携が噂されていましたが、新たにGoogleが候補に加わったことで、AI業界の勢力図に大きな変化をもたらす可能性があります。
私たちユーザーにとって、これがどのような影響を与えるのか、詳しく見ていきましょう。
Google Geminiがサーバー専用モデルを開発中
BloombergのMark Gurman氏の報道によると、AppleはGoogle(Alphabet Inc.)に対して、新しいSiriの基盤となるカスタムAIモデルの構築を打診したとのことです。特に注目すべきは、GoogleがAppleのサーバー上で動作する専用モデルのトレーニングを既に開始している点です。
Apple has also held talks with Anthropic, and to some extent OpenAI, for powering Siri. It may still also stick to its own foundation models. A decision likely won’t be made for several weeks. https://t.co/A6v2UHxUL2
— Mark Gurman (@markgurman) August 22, 2025
これまでのSiriは主にデバイス上で処理されることが多かったのですが、次世代版では大幅にクラウド処理の比重が高まることが予想されます。Google Geminiは現在、AndroidのAIシステムやSamsungのAI機能を支えており、その技術力の高さは実証済みです。
現在、私たちがMacやiPhone、iPadで利用している多くのサードパーティアプリでも、すでにGeminiが活用されているケースがあります。つまり、技術的な互換性という観点では、十分に実現可能性があると言えるでしょう。
Apple社内で進む「AI対決」の実情
Appleは現在、社内で興味深い取り組みを行っています。新しいSiriの開発において、2つの異なるアプローチを並行して進めているのです。
- 「Linwood」プロジェクト: Apple独自のAIモデルを使用
- 「Glenwood」プロジェクト: 外部技術(OpenAI、Anthropic、Google Gemini等)を活用
この「AI対決(bake-off)」と呼ばれる内部競争は、どちらのアプローチが最も優れた結果を出すかを判断するためのものです。技術系企業でよく見られる手法ですが、Appleがここまで大規模に複数の選択肢を検討するのは珍しいことです。
興味深いのは、Appleがこれまで自社技術にこだわってきた企業であることを考えると、外部パートナーとの連携を真剣に検討している姿勢が見て取れることです。これは、AI分野での競争が想像以上に激しく、単独での開発では限界があることを示唆しているのかもしれません。
Anthropicとの価格交渉が難航する理由
Claude AIで知られるAnthropic社は、当初Apple側から最有力候補と見られていました。しかし、報道によると価格面での折り合いがついていない可能性があります。
AI model提供における価格設定は非常に複雑で、以下のような要素が関係しています:
- 処理回数あたりの従量課金
- 専用モデル開発費用
- サーバーリソース使用料
- 技術サポート費用
Anthropicは比較的新しい企業のため、収益確保の観点から強気な価格設定を行っている可能性があります。一方、Googleのような巨大企業は、他のサービスとの相乗効果も期待できるため、より柔軟な価格設定が可能かもしれません。
Appleが開発中の1兆パラメータモデルの影響
現在Appleは、従来の1500億パラメータモデルを大幅に上回る、1兆パラメータのAIモデルのテストを開始しています。これは技術的に非常に大きな進歩を意味します。
パラメータ数の増加は一般的に以下のような改善をもたらします:
- より自然な対話能力
- 複雑な質問への対応力向上
- 文脈理解の精度向上
- 多言語対応の強化

ただし、パラメータ数が多いほど処理に必要な計算リソースも増加するため、コストとのバランスが重要になります。Apple独自の1兆パラメータモデルが外部モデルと競合できるレベルに達すれば、最終的に自社技術を選択する可能性も十分にあります。
ユーザーにとっての具体的なメリットと注意点
期待できる改善点
1. より自然な音声対話
現在のSiriは定型的な応答が多いですが、新しいモデルでは人間らしい自然な会話が可能になると期待されます。
2. 複雑な質問への対応
「明日の会議に必要な資料をメールで探して、要点をまとめて」のような複数ステップの指示にも対応できるようになるでしょう。
3. 文脈の記憶力向上
会話の流れを覚えているため、「それについて詳しく教えて」のような曖昧な質問でも適切に理解してくれます。
注意すべき点
プライバシーへの配慮
外部のAIモデルを使用する場合、データがApple以外のサーバーを経由する可能性があります。Appleはプライバシー保護に定評がありますが、パートナー選択において慎重な検討が必要です。
サービス安定性
外部依存が高まることで、パートナー企業のサービス障害がSiriの動作に直接影響する可能性があります。
2026年春リリースに向けた現実的なスケジュール
Appleは当初、iOS 18での新Siri提供を予定していましたが、技術的な課題と組織再編により2026年春まで延期されました。この延期は一見残念に思えますが、より完成度の高い製品を提供するための賢明な判断と言えるでしょう。
開発スケジュールから推測すると、以下のようなタイムラインが予想されます:
- 2025年秋〜冬: 最終的なAIパートナーの決定
- 2026年春: 開発者向けベータテストの開始
- 2026年夏: 一般ユーザー向けパブリックベータ
- 2026年秋: 正式リリース
このスケジュールは、他の主要AI企業の動向にも左右される可能性があります。OpenAIのGPT-5やGoogleのGemini Ultraなど、競合製品の進化スピードが、Appleの戦略に影響を与えることも考えられます。
今回の発表で見えてきたAI業界の未来
Apple、Google、OpenAI、Anthropicという主要プレイヤーが一堂に会するこの状況は、AI業界全体にとって重要な転換点となりそうです。特に注目すべきは、Appleが長年維持してきた「自社技術優先主義」から、より現実的な「最適技術選択主義」へとシフトしている点です。
私たちユーザーにとっては、この競争が最終的により優れたAI体験をもたらしてくれることが期待できます。2026年春のリリースに向けて、各社がどのような技術革新を見せてくれるのか、今後の動向にも注目していきたいと思います。
(Via 9to5Mac.)


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