2024年、動画編集ソフトウェアの最前線が大きく動きました。

Appleが満を持して発表したFinal Cut Proの大型アップデートは、MacとiPadの両プラットフォームに革新的な機能をもたらしています。

Mac版Final Cut Pro 11の革新的な新機能

マグネティックマスク機能の登場

Final Cut Pro 11で導入された「マグネティックマスク」は、動画編集の概念を一新する革新的な機能です。従来のタイムライン上での「マグネティック」な操作性を、マスク機能にまで拡張したこの新機能により、編集ワークフローは大きく変革されます。

具体的には、シーン内の特定の人物やオブジェクトを簡単にマスクすることが可能となり、それらに対して個別のカラーグレーディングやエフェクトを適用できるようになりました。この機能は、特に以下のような場面で威力を発揮します：

• 人物の肌色補正を周囲の映像に影響を与えることなく実施
• 特定のオブジェクトだけを強調するエフェクト処理
• 複雑な背景からの被写体の分離作業

AIによる自動クローズドキャプション生成

人工知能技術を活用した自動クローズドキャプション生成機能は、編集者の作業効率を劇的に向上させる革新的な機能です。この機能は、新しいMac miniの発表時に一瞬だけ披露されていましたが、今回のアップデートで完全に実装されました。

音声からテキストへの変換は、高度な AI アルゴリズムによって処理され、驚くべき精度で字幕を生成します。これにより、以下のような利点がもたらされます：

• 編集時間の大幅な短縮
• 多言語対応の容易化
• アクセシビリティの向上

Apple Vision Pro対応と空間ビデオ編集

最も注目すべき新機能の一つが、Apple Vision Proに対応した空間ビデオ編集機能です。この革新的な機能により、以下のような操作が可能となります：

• 空間ビデオフッテージのインポートと編集
• 奥行き位置の調整
• タイトルやエフェクトの3D空間への配置

対応デバイスも充実しており、以下の機器で空間ビデオの撮影が可能です：

• iPhone 15 Pro
• iPhone 16
• iPhone 16 Pro
• Canon RF-S7.8mm F4 STM DUAL レンズ（Canon R7との組み合わせ）

iPad版Final Cut Pro 2.1の進化

強化されたカラーグレーディング機能

iPad版Final Cut Pro 2.1では、カラーグレーディング機能が大幅に強化されました。Mac版ほどの高度な機能は備えていませんが、以下のような新機能が追加されています：

• 新しいカラーグレーディングプリセット
• インテリジェントな「Enhance Light and Color」機能

　 – コントラスト自動調整
　 – 明るさの最適化
　- カラーバランスの自動補正

特筆すべきは、この機能が以下の様々なフォーマットに対応していることです：

• SDR
• HDR
• RAW
• Log-encoded メディア

拡張されたライブドローイング機能

クリエイティブな表現の幅を広げる新しいブラシツールが追加されました：

• ウォーターカラー
• クレヨン
• ファウンテンペン
• モノラインペン

これらの新しいブラシは、動画に手書きの要素を加える際の表現の幅を大きく広げています。

Final Cut Pro Cameraの進化

新しい撮影機能

Final Cut Pro Cameraも significant なアップデートを受けており、以下のような新機能が追加されました：

• LOG LUTのサポート

　- 撮影中のプレビュー対応
　- より小さいファイルサイズでのLOG HEVC記録

• 撮影補助機能の強化

　- トップダウン撮影用の水準器
　- iPhone 16 Pro シリーズでの4K/120fps撮影対応

プロフェッショナルワークフローへの影響

作業効率の面では、特にAIによるキャプション生成やインテリジェントなカラー補正といった自動化機能により、大幅な時間短縮が実現されています。また、クリエイティブ面においても、新しいブラシツールや空間ビデオ編集の導入により、表現の可能性が大きく広がっています。

さらに、MacとiPad間のシームレスな連携や、より直感的な編集操作を実現することで、ワークフローの柔軟性も著しく向上しています。

今後の展望と課題

今後の展望と課題に目を向けると、特にプラグイン対応について注目すべき状況が続いています。iPad版Final Cut Proの発表から約18ヶ月が経過した現在も、サードパーティ製プラグインの対応は実現していません。

この状況には、プラグイン開発環境の整備やパフォーマンスの最適化といった技術的な課題が存在します。さらに、開発コストと市場規模の関係性や、プラットフォーム戦略といったビジネス的な観点からも、慎重な検討が必要とされています。

(Via Apple.)