スマートフォンやパソコンの世界で、Appleは独自のチップ設計によって他社の追随を許さない性能を実現しています。

なぜAppleが自社でチップを設計することにこだわり、どのようにして業界最高峰のパフォーマンスを達成しているのか。

Appleが独自チップ設計にこだわる理由

AppleのMac製品マーケティング担当副社長Tom Boger氏とプラットフォームアーキテクチャ担当副社長Tim Millet氏は、最近のApple製品アップデートで使用されている新しいM4チップラインについて、インドのメディア「The Indian Express」のインタビューで語りました。

Millet氏は、「私たちは商用シリコンカンパニーではありません。チップを製造して他社に販売することはしていません」と語っています。

M4チップが実現する圧倒的な性能の秘密

三つの重要な要素の完璧な統合

新しく登場したM4チップの開発において、Appleは以下の3つの要素を完璧に統合することで、驚異的な性能を実現しています：

1. アーキテクチャ（基本設計）




2. デザイン（具体的な回路設計）




3. プロセス技術（製造技術）

これらの要素を自社でコントロールすることで、電力効率と性能の両立を実現しています。Mac製品マーケティング担当副社長のBoger氏は、「電力あたりの性能において、他のプラットフォームは私たちに及びません」と自信を見せています。

「秘密兵器」と呼ばれる協調設計の力

しかし、Appleの真の強みはこれだけではありません。Millet氏は「私たちの第4の道具、本当の意味での秘密兵器は、システムチームやプロダクトデザイナーたちと協力してチップを設計できる能力です」と語っています。

例えば、新しいMac miniの開発では、ハードウェアチームとソフトウェアチーム、そしてデザインチームが緊密に連携することで、従来では実現不可能だった性能と機能を実現することができました。

AIへの取り組みとニューラルエンジンの進化

早期からのAI重視の姿勢

Appleは2017年という早い段階で、iPhoneのチップにニューラルエンジン（AI処理に特化した機能）を搭載していました。この決断は、コンピュータビジョンの研究成果に着目したものでした。トロント大学の研究者たちが示した画像認識技術の可能性に、Appleは素早く反応したのです。

未来を見据えた技術開発

特筆すべきは、現在のAIブームの基礎となっているトランスフォーマーネットワーク（大規模言語モデルの基盤技術）についても、Appleは2017年の時点で注目し、M系列チップの設計に組み込んでいたという事実です。Millet氏は「私たちは常に、技術の潮流がどこに向かうのかを見極め、その到達点に先回りして準備しておくことを心がけています」と説明しています。

ユーザー志向の革新

Appleの技術革新の原動力は、常にユーザーのニーズにあります。例えば、新しいMacBook Proでは、電源に接続していても接続を外しても同じパフォーマンスを維持できる設計を実現しました。これは、場所を選ばず作業したいというユーザーの要望に応えたものです。

より高度な用途に対応するM4 ProとM4 Max

より要求の高いユーザーのために、AppleはM4 ProとM4 Maxという上位モデルも用意しています。特にM4 Maxは、M4 Proの2倍のメモリ帯域幅を持ち、大規模なAIモデルの処理など、より高度な作業にも対応できる設計となっています。

(Via Apple Insider.)