AppleとEUの140億ドル税金訴訟、9月10日に最終判決へ
世界最大のIT企業の一つであるAppleと欧州連合(EU)との間で繰り広げられている、壮大な税金訴訟についてお話しします。
BloombergのMark Gurman氏は、最新のニュースレターでAppleの「Glowtime」 イベントが通常の9月10日(火)から、9月9日(月)に変更になったのは、この問題に対するEU最高裁判所が判決を下す予定日になることと、この日が、カマラ・ハリス氏とドナルド・トランプ氏による初の米大統領討論会が開催される予定日だったことを上げています。
事の発端:2004年のアイルランドとの税金取引
まず、この長期化する争いの始まりから見ていきます。
Appleの巧みな税金戦略
2004年、Appleはアイルランドとの間で、10年間の税金取引を結びました。この取引の内容は、一つの会社の中に二つの子会社を設立することで、税金の抜け道(ループホール)を利用するというものでした。
「ダブルアイリッシュ」とは?
このような税金対策は「ダブルアイリッシュ」と呼ばれ、当時のアイルランドでは合法的な税金回避の手段として知られていました。簡単に言えば、知的財産権などの無形資産を持つ会社が、税金をほとんど払わずに済む仕組みです。
EUの調査と140億ドルの税金請求
しかし、この状況はEUの目に留まることになります。
EUの調査開始と違法判断
2014年、EUは調査を開始し、2016年にはこの取引が違法であると判断しました。その結果、Appleに対して約140億ドル(当時のレートで約130億ユーロ)の追徴課税を命じたのです。
Appleとアイルランドの反発
この判断に対し、AppleとアイルランドのどちらもEUの決定に反対しました。彼らの主張は、「アイルランドの法的主権を侵害している」というものでした。
法廷闘争の長期化:10年に及ぶ攻防
この問題は、簡単には解決しませんでした。
エスクロー口座の設置
Appleは判断に従い、いったん13億ユーロをエスクロー口座(第三者が管理する特別な口座)に預けました。これは、最終的な判断が出るまでの措置です。
2020年:Appleの勝利?
2020年、EU一般裁判所はAppleに有利な判断を下しました。しかし、これで終わりではありませんでした。
EUの上告と新たな展開
EUは直ちに上告し、2023年末には欧州司法裁判所の最高顧問が「一般裁判所の判断を無効にすべき」との見解を示しました。
この裁判の影響と今後の展望
では、この裁判は私たちにどのような影響を与えるのでしょうか?
グローバル企業の税金対策への影響
この裁判の結果は、AppleだけでなくIT業界全体の税金対策に大きな影響を与える可能性があります。多国籍企業の税金逃れに対する国際的な監視が強まるかもしれません。
EU域内での経済政策への影響
また、EU加盟国の税制主権と、EUの公正競争政策とのバランスについても、新たな判断基準が示される可能性があります。
消費者への影響は?
直接的には、この裁判の結果が製品価格に反映されることはないでしょう。しかし、長期的には企業の税金負担が増えることで、間接的に影響が出る可能性もあります。
日本企業への影響は?
この判決は、ヨーロッパで事業を展開する日本企業にとっても他人事ではありません。グローバル企業の税金対策に対するEUの姿勢が明確になることで、日本企業も自社の税務戦略を見直す必要が出てくるかもしれません。
10年に及ぶ税金訴訟の行方
この訴訟は、単なる一企業とEUの争いではありません。グローバル経済における公正な課税のあり方、各国の税制主権とEUの権限のバランスなど、現代社会の重要な問題を含んでいます。
最終的な判断が下されるまでには、まだ数年かかるかもしれません。しかし、その結果は間違いなく、世界経済に大きな影響を与えることでしょう。
(Via Appleinsider.)
LEAVE A REPLY