Apple、Siriの次世代版でAnthropic・OpenAIと提携検討|自社AI開発から方針転換か

Apple、Siriの次世代版でAnthropic・OpenAIと提携検討|自社AI開発から方針転換か

「Hey Siri、って呼びかけること、最近なんだか減っていませんか?」

スマートフォンのアシスタント機能って、最初は未来を感じさせてくれましたよね。でも、ChatGPTみたいな驚くほど賢いAIが次々と登場する中で、私たちのiPhoneにいるSiriは、正直ちょっと物足りなさを感じることが増えたかもしれません。「今日の天気は?」くらいなら問題ないけど、少し複雑なことを頼むと「すみません、よくわかりません」と返ってきて、がっかりすることも。

この記事を読めば、なぜSiriがなかなか賢くならないのか、そのリアルな理由がわかります。そして、Appleが水面下で進めている「Siri大改造計画」の、ちょっとドキドキするような舞台裏を覗き見ることができます。

Appleが外部AI企業と交渉を開始

Bloomberg の Mark Gurman氏による報道によると、AppleはSiriの改良版を開発するため、AnthropicとOpenAIの両社と交渉を行っています。これは、これまで自社技術にこだわってきたAppleにとって、大きな方針転換といえるでしょう。

具体的には、両社に対してAppleのPrivate Cloud Computeインフラ上で動作する、カスタマイズされた大規模言語モデルの開発を依頼しているとのこと。つまり、AWSやAzureといった他社のクラウドサービスに頼るのではなく、Appleシリコンを搭載した自社サーバー上でAIモデルを稼働させる計画です。

これにより、Appleはプライバシー保護により多くのコントロールを持てるようになります。ユーザーのデータが外部に流出するリスクを最小限に抑えながら、高性能なAI機能を提供できるのです。

なぜAppleは自社開発を諦めたのか

実は、Apple内部では2026年に完全自社製の「LLM Siri」をリリースする計画が進行中でした。しかし、複数回のテストを重ねた結果、現時点ではAnthropicの技術の方がSiriのニーズにより適していると判断されたようです。

この決断の背景には、AI分野での激しい競争があります。ChatGPTを開発したOpenAIや、Claude を手がけるAnthropicは、日々技術革新を続けています。一方で、Apple は比較的保守的なアプローチを取ってきたため、AI技術の発展スピードについていけない状況が生まれていました。

興味深いことに、このプロジェクトはMike Rockwell氏とCraig Federighi氏が主導しています。これは、Tim Cook CEOが以前の責任者であるJohn Giannandrea氏への信頼を失ったためと報じられています。経営陣レベルでの大きな方針転換が起きていることが分かります。

価格交渉で大きな隔たり

Apple Anthropic OpenAI_02.
しかし、提携実現への道のりは平坦ではありません。最大の障害となっているのが、価格面での交渉です。

Anthropic側は年間数十億ドルという巨額の費用を要求しており、しかもその金額は毎年大幅に増加していく契約を提案しています。これは、Apple側にとって受け入れ難い条件のようです。

このような状況から、AppleはOpenAIや他の企業との提携も検討せざるを得ない状況になっています。複数の選択肢を持つことで、より有利な条件での交渉を目指している可能性があります。

交渉が長期化すれば、Siriの改良も遅れることになります。ユーザーとしては、一日でも早く賢くなったSiriを使いたいところですが、ビジネス上の現実はそう簡単ではないようです。

Apple内部で起きている人材流出問題

Apple Anthropic OpenAI_03.
外部との交渉と並行して、Apple内部では深刻な問題も発生しています。Foundation Modelsチームの士気が大幅に低下しており、一部のメンバーは自分たちが生成AI分野での遅れの責任を押し付けられていると感じているようです。

さらに深刻なのが、人材確保の問題です。MetaやOpenAIといった企業が年間4,000万ドル(約60億円)という破格の報酬を提示している中、Appleの待遇では優秀なAI研究者を引き留めることが困難になっています。

実際に、Appleのオープンソース機械学習フレームワーク「MLX」の開発チームが一斉退職を検討する事態まで発生し、Appleは急遽厚遇でのカウンターオファーを行ったと報じられています。

これは、単純に給与の問題だけではありません。AI分野で最先端の研究に携わりたい研究者にとって、より自由度の高い環境や、影響力の大きなプロジェクトに参加できる機会は金銭以上に魅力的なのです。

今後の展望:ユーザーにとってのメリット

これらの動きは、最終的にはユーザーにとって大きなメリットをもたらす可能性があります。

まず、Siriがより自然で流暢な会話ができるようになることが期待されます。現在のSiriは決められたコマンドへの応答が中心ですが、将来的にはより複雑な質問や要求にも柔軟に対応できるようになるでしょう。

また、Apple独自のプライバシー重視の姿勢も維持されます。外部のAI技術を活用しながらも、データ処理はAppleのサーバー内で完結するため、プライバシー保護とAI機能の向上を両立できるのです。

ただし、サービス開始までにはまだ時間がかかりそうです。現在の交渉状況を考えると、実際にパワーアップしたSiriを使えるようになるのは2025年以降になる可能性が高いでしょう。

私たちユーザーができることは、これらの技術進歩を注意深く見守ることです。そして、新しいSiriが登場した際には、プライバシー設定を適切に管理しながら、その恩恵を最大限に活用していきましょう。

まとめ

AppleのSiri改良計画は、同社のAI戦略における重要な転換点となっています。
自社開発へのこだわりを一部手放してでも、ユーザーエクスペリエンスの向上を図ろうとする姿勢は評価できるでしょう。

価格交渉や人材確保といった課題は残っていますが、最終的にはより賢く、より使いやすいSiriが私たちの手に届くことになりそうです。
AI技術の進歩は日進月歩ですが、その恩恵を安全かつプライベートに享受できる未来に期待したいと思います。

(Via 9to5Mac.)


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