トランプ大統領が再び大統領職に就くこととなり、米国の経済政策と特に大企業の独占に対する姿勢が注目を集めています。このたび、トランプ氏は司法省（DoJ）の反トラスト部門の長官としてGail Slater氏を指名し、特にAppleを巡る反トラスト訴訟において新たな動きが予想されます。

Gail Slater氏の指名とその背景

トランプ大統領は、反トラスト部門の長官としてGail Slater氏を指名しました。この決定は、水曜日にトランプ氏が自身のSNSプラットフォーム「Truth Social」で発表したものです。

トランプ氏は、”競争法が力強く、かつ公正に執行されることを確実にする”ことを強調しており、Slater氏の指名はその意図を示す重要な一手と言えます。

Slater氏はトランプ政権の第1期でも技術政策アドバイザーとして活躍しており、特にナショナル・エコノミック・カウンシルでの役割を通じて、テクノロジー関連の政策に深く関わってきました。

現在もトランプの移行チームに対して反トラストおよび技術政策に関するアドバイスを行っており、副大統領であるJD Vance氏の経済政策アドバイザーとしても活動しています。

この経験を持つSlater氏が新たに反トラスト部門を率いることで、米国の技術産業や独占問題にどのような影響を与えるのかが注目されます。

Appleに対する反トラスト訴訟の概要

トランプ政権下で特に注目されているのが、Appleに対する反トラスト訴訟です。2023年5月、司法省（DoJ）はAppleがスマートフォン市場での独占を不当に維持しているとして訴訟を提起しました。

この訴訟はニュージャージー州の連邦地方裁判所に提出され、Appleが開発者に対して契約上の制限を課し、重要なアクセスポイントを意図的に制限することによって市場競争を妨げていると主張しています。

具体的には、AppleはiPhone以外の選択肢を減少させ、消費者や開発者に対するコストを高めるような行為を行っているとされています。また、アプリやサービスの相互運用性を抑え込むことで、他の製品の利用を難しくし、ユーザーがAppleのエコシステムに依存するように仕向けているとのことです。

このような行為が、市場における健全な競争を妨害しているとして、司法省と複数の州の検事総長は、市場競争の復活を求めて法的な救済を要求しています。

Appleの反論とその根拠

Appleはこの訴訟に対して強く反論しており、司法省の訴訟は反トラスト法における要件を満たしていないとして、訴えの棄却を求めています。Appleの提出した書類には、長年にわたる反トラスト法の解釈に基づき、司法省の主張は「全く根拠がない」との立場が明記されています。

Appleはさらに、政府が提起した5つの事例が競争に対して悪影響を与えたことを示す証拠はないとし、これを理由に政府の新たな反トラスト理論を裁判所が認めるべきではないと主張しています。

また、Appleはこのような広範な規制が認められた場合、iPhoneの持つ「プライバシー、安全性、セキュリティ」という他のスマートフォンとの差別化要素が失われ、消費者にとっての選択肢がむしろ狭まるリスクがあると強調しています。

今後の影響と見通し

トランプ政権は、企業間の合併・買収に対して一般的に友好的な姿勢を取ると予想されています。しかし、反トラストに関しては「イノベーションの促進」および「米国国内での技術発展の支援」という観点から厳しい基準を設ける可能性もあり、その結果がどのように出るかは現時点で不透明です。

特にAppleに対する訴訟が進展するかどうかは、Slater氏のリーダーシップに大きく依存するでしょう。Slater氏がどの程度まで企業の独占を認めるのか、あるいは市場の健全な競争を守るために厳格な立場を取るのかは、今後の政策や米国の技術業界全体に大きな影響を与えることが予想されます。

Apple訴訟の今後のシナリオ

1. 司法省の勝訴：


　この場合、Appleは競争を促進するために、開発者に対する制限を緩和し、他の製品やサービスとの相互運用性を高める措置を取る必要があります。これにより、消費者はiPhone以外の製品を自由に選択できる環境が整う可能性があります。


2. Appleの勝訴：


　もしAppleの主張が認められた場合、司法省の訴訟は棄却され、Appleは現在のビジネスモデルを維持することができます。このシナリオでは、Appleは引き続きiPhone中心のエコシステムを強化し、他社との連携を限定する形となります。


3. 和解：


　最終的に両者が和解に至る可能性もあります。この場合、Appleが一定の条件を飲むことで市場競争を促進しつつも、Apple独自の強みを保持する道を探ることになるでしょう。

(Via Apple World Today.)