EUのDMAは誰のため?Appleが欧州ユーザーにiOS 26の機能を提供しない本当の理由

最新のiPhoneを持っているのに、なぜか新機能が使えない。そんな経験をしたことはありませんか?
実は今、EU(欧州連合)のAppleユーザーが、まさにこの状況に直面しています。iOS 26の新機能「Visited Places(ユーザーが訪れた場所を自動的に記録・保存する機能)」をはじめ、複数の機能がEU内では利用できない、または大幅に遅れてリリースされることが明らかになりました。
この記事を読めば、その複雑な問題の背景がスッキリわかります。なぜAppleはヨーロッパで一部の機能を提供しないと決めたのか、そして、その話が遠いヨーロッパだけの問題ではなく、私たちの未来のスマホ生活にどう関わってくるのか。
なぜEUだけAppleの新機能が使えないの?
答えは「DMA(デジタル市場法)」という法律にあります。
DMAは2024年にEUで施行された法律で、GoogleやApple、Amazonといった巨大テック企業を「ゲートキーパー」として指定し、他社に対して技術やデータの共有を義務付けています。
一見すると消費者のためになりそうな法律ですよね。でも実際には、Appleのユーザーが新機能を使えなくなるという、本末転倒な状況が生まれています。
2025年6月30日、Appleの法務担当Kyle Andeer氏がブリュッセルで開催されたDMAコンプライアンスワークショップで、EU当局に対して直接こう伝えました。
EU内の顧客向けに、製品や機能のリリースを遅らせざるを得ない決定をすでに下しています

具体的にどんな機能が使えないのか?
現在、EU内のAppleユーザーが使えない、または制限されている機能は以下の通りです。
すでに制限されている機能:
– iPhoneミラーリング(MacでiPhoneの画面を操作)
今後制限される可能性がある機能:
– Visited Places(訪問場所の記録機能)
– MacでのLive Activities(iPhoneで実行されているLive ActivitiesがMacのメニューバーに表示され、リアルタイムの情報を確認できるようになります)
– その他のiOS 26新機能(詳細は未公表)
特にiPhoneミラーリングは、Macユーザーにとってかなり便利な機能でした。仕事中にMacの画面でiPhoneのメッセージやアプリを操作できるので、作業効率が大幅に向上します。
でも、EU内ではこの機能を使うことができません。理由は、Appleがこの技術を他社と共有することを求められているためです。
なぜAppleは技術共有を嫌がるのか?
Appleが特に懸念しているのが、Metaをはじめとする他社からの過度な技術・データアクセス要求です。
Andeer氏は、すでに強制された変更により「ユーザーのプライバシー、セキュリティ、安全に真のリスクが生じている」と述べています。
確かに、Metaの過去の実績を見ると、Appleの懸念も理解できます。
– 2018年のCambridge Analytica事件
– 2019年に発覚した6億件のパスワード平文保存問題
– 2025年6月にも新たなプライバシー問題が発生
そんな企業に、Appleが長年かけて構築したセキュリティ技術を開示することの危険性は、容易に想像がつきます。
他の企業はどうなっているの?
ここで興味深いのは、同じくゲートキーパーに指定されたMicrosoft、Google、Amazonは、Appleほど厳しい制約を受けていないことです。
これらの企業は、自社の技術を開発して自社だけで利用することができています。でもAppleだけは、iOS 26の新機能を開発しても、それを他社と共有することを求められる可能性があります。
極端な例で言えば、AppleがAndroidミラーリング機能まで開発しなければならない可能性すらあります。
つまり、「オープンシステム」を謳いながら、実際には一社(Apple)だけが一方的に技術を提供し、他の企業は恩恵だけを受けるという、とても不平等な状況になっているのです。
DMAの本当の目的は何だったのか?

DMAは本来、消費者の利益を守るために作られたはずでした。
でも現実を見ると、恩恵を受けているのは主に大企業、特にSpotifyなどのヨーロッパ企業です。一般の消費者は、むしろAppleの新機能を使えなくなるという不利益を被っています。
Appleは2024年に、DMAに完全準拠する解決策を提案しましたが、EUは「待て」と言った後、その解決策を実装していないことを理由に5億7000万ドル(約850億円)の罰金を科しました。
Appleがこの罰金に異議申し立てをしているのも、当然と言えるでしょう。
今後どうなるのか?
Appleと EU当局との対話は、残念ながら良好とは言えません。
2025年6月20日から7月3日にかけて、各社のDMAコンプライアンスワークショップが開催されており、Appleは6月30日、Metaは最後の7月3日に参加します。
でも、これまでの経緯を見る限り、劇的な改善は期待できそうにありません。Metaは相変わらず「ユーザーの全パスワード、写真、データへのアクセスが必要」と主張し、EUはそれを認める可能性が高いからです。
私たちにとって何が問題なのか?

この問題で一番困るのは、結局のところ一般のユーザーです。
EU内のAppleユーザーは、世界の他の地域より遅れて新機能を受け取ることになります。場合によっては、全く使えない機能も出てくるでしょう。
そして、セキュリティの脆弱性が生まれる可能性もあります。Appleが長年かけて築いてきたプライバシー保護の仕組みが、他社との強制的な技術共有によって弱くなる恐れがあるからです。
これでは、「消費者のため」と言われたDMAが、実際には消費者にとって不利益をもたらしているとしか思えません。
これは対岸の火事じゃない。私たちの未来のスマホ選びに関わる話
「ヨーロッパの話でしょ?自分には関係ないや」と思うかもしれません。しかし、この動きは決して対岸の火事ではないのです。EUが始めたこのような巨大IT企業への規制は、世界中の国々が注目しています。今後、日本を含め、他の国でも同じようなルールが導入される可能性は十分にあります。
そうなった時、私たちが当たり前のように享受している便利な機能や、固く守られていると信じているプライバシーが、思わぬ形で制限される日が来るかもしれません。企業が新しい挑戦をしにくくなれば、技術の進歩そのものが遅れてしまうことだって考えられます。
今回の一件は、「ルール」とは一体誰のためにあるべきなのか、そして、テクノロジーとどう付き合っていくべきなのかを、私たち一人ひとりに問いかけています。
まとめ
でも、DMAが本当に消費者の利益になっているかは、もう一度冷静に考え直す必要があります。
現在の状況は、大企業同士の利益争いに一般消費者が巻き込まれているだけのように見えます。
技術の進歩と競争の促進は大切です。
でも、それがユーザーの不利益につながるような規制なら、本末転倒と言わざるを得ません。
次にスマートフォンの新機能や新しいサービスのニュースを見るとき、ぜひこう考えてみてください。
「この機能は、世界中どこでも使えるのかな?」「このサービスの裏には、どんなルールがあるんだろう?」と。
その少しの好奇心が、私たちのデジタルライフの未来を、より良いものにしていくはずです。
(Via Apple Insider.)


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