今週初め、AI企業のAnthropicは自社のAIチャットボット「Claude」にWeb検索機能を米国で追加したことを発表しました。
この動きにより、Claudeは競合他社の多くのチャットボットと同様の機能を備えることになりました。当初、この検索機能がどのような検索インデックスを使用しているのかは明らかではありませんでしたが、最近の調査によると、ブラウザ開発企業Braveが提供する「Brave Search」が採用されていることが示唆されています。
Claudeの検索機能の裏側
Claudeの検索機能が誰のテクノロジーに支えられているのかについては、多くの推測がありました。Anthropic自身が独自の検索インデックスを開発した可能性も考えられていましたが、最近の発見がその謎を解き明かしつつあります。
ソフトウェアエンジニアのAntonio Zugaldia氏が金曜日に発見したところによると、AnthropicはClaudeのデータを処理するパートナー企業のリスト(「サブプロセッサリスト」)に「Brave Search」を追加しました。これは公式文書に記載されており、ClaudeのWeb検索がBraveのテクノロジーに依存していることを強く示唆しています。
さらに、イギリスのプログラマーSimon Willison氏による調査では、ClaudeとBraveの検索結果が同一の引用を返すケースが確認されています。技術的な側面からも証拠が見つかっており、ClaudeのWeb検索機能には「BraveSearchParams」というパラメータが含まれていることがWillison氏によって発見されました。
これらの証拠を総合すると、AnthropicはClaudeの検索機能を強化するために、Braveの検索技術を活用していると考えるのが自然です。
AIチャットボットにおける検索機能の重要性
AIチャットボットに検索機能を統合することは、単なる便利さの追加以上の意味を持ちます。この機能により、AIは最新の情報にアクセスできるようになり、より適切で時宜を得た回答を提供できるようになります。
従来のAIモデルは、トレーニングデータの時点までの情報しか持ち合わせていないという制約がありました。例えば、2023年までのデータでトレーニングされたモデルは、2024年の出来事については知識を持ちません。
しかし、Web検索機能を追加することで、この「知識のカットオフ」の問題を解決し、最新の情報に基づいた回答が可能になります。
Claudeのようなチャットボットが検索機能を備えることで、ユーザーは別のタブやアプリケーションに切り替えることなく、会話の流れの中で情報を得ることができます。これにより、AIとのやり取りがよりシームレスで効率的なものになります。
Braveとは何か
Braveは比較的新しいプレイヤーですが、急速に成長しているブラウザおよび検索エンジンの開発企業です。同社は広告ブロック機能を標準搭載したWebブラウザ「Brave Browser」で知られており、プライバシーを重視する姿勢で多くのユーザーから支持を得ています。
2021年に独自の検索エンジン「Brave Search」をローンチしましたが、これはGoogleやBingとは異なり、独自のWebインデックスを構築する検索エンジンです。Braveはプライバシー保護と透明性を重視したアプローチを取っており、ユーザーのデータ収集を最小限に抑えた検索体験を提供しています。
このような背景から、AnthropicがBraveを選択したことは、単に技術的な理由だけでなく、両社の価値観の一致も要因かもしれません。Anthropicも倫理的なAI開発を重視する企業として知られています。
日本でもWeb検索機能を今現在、使う事は出来る
これまでも、ClaudeのMCPを利用すれば Brave Searchを利用する事は出来ていました
また、VPNを利用すれば米国でのみ利用可能なWeb検索機能であっても日本で使用できます。
AI業界における検索パートナーシップの動向
Braveはすでに他のAIチャットボットでも検索機能を提供しています。2月には、BraveとフランスのAI企業Mistralが提携し、Mistralのチャットボットプラットフォーム「Le Chat」がリアルタイムのWeb検索結果を得るためにBraveの検索APIを使用することが発表されました。
一方、他のAI企業は検索インデックスのパートナーシップに関する情報を明かさない傾向があります。これは競争上の理由からと考えられます。例えば、OpenAIはMicrosoftのBingとのパートナーシップを結んでいますが、ChatGPTの検索機能を強化するために他の非公開ソースも使用していると言われています。
このような状況からも、AIチャットボットの検索機能をめぐる競争が激化していることがうかがえます。各社は自社のAIに最適な検索技術を選び、それを差別化要因の一つとして位置づけようとしています。
今後の展望と業界への影響
AnthropicとBraveの提携(正式な発表はまだありませんが)は、AI業界と検索エンジン業界の融合が進んでいることを示しています。今後、さらに多くのAI企業が検索機能を強化するためにさまざまな検索エンジンと提携する可能性があります。
また、GoogleやMicrosoftといった大手テック企業も、自社の検索エンジンとAI技術を統合する取り組みを強化しています。このような状況下で、Braveのようなプライバシーに配慮した検索エンジンの存在感が高まることは、業界全体にとってポジティブな変化をもたらす可能性があります。
ユーザーの立場からは、AIチャットボットの検索機能が強化されることで、情報収集の方法が変わる可能性があります。従来の検索エンジンでキーワードを入力して結果のリストから情報を探す方法から、自然言語で質問してAIが関連情報を要約して提供する方法へと、情報アクセスのパラダイムシフトが起こりつつあるのです。
まとめ
この動きは単なる技術的な連携以上の意味を持ち、情報へのアクセス方法の変革につながる可能性があります。
Anthropicが公式に確認するまでは推測の域を出ませんが、複数の証拠がBraveとの提携を指し示しています。
AIチャットボットの競争が激化する中、検索機能の質と信頼性は重要な差別化要因となるでしょう。
今後も、AIチャットボットの能力向上と共に、私たちの情報収集や知識アクセスの方法が大きく変わっていくことが予想されます。
(Via Tech Crunch.)
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